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Twitterからのまとめ

〜2020/02/22


















































〜20190515





























グレープフルーツ

グレープフルーツ


サッシから足を投げだして君が皮を剥く

房をひとつ外しつるりとそれも剥く

ベランダの椅子で

君が伸ばした手からそれをひとくちで含む

ひと房そしてまたひと房

少しちぎれたのを君が口にする以外を次々

二つ目の半分でもういらないになるまでそうして

残り半分を前に君は紅茶とおしぼりを運んでくる

指とべたつくあごを拭いてそれを受け取る

君は続きを剥いて口に運ぶ

君の脇をすり抜けタバコを取って戻る

食べ終わって指を拭き二人タバコを吸う


ちかくにいると確信できるとき

常夏

「常夏」



向日葵に似た笑顔
夕立の様な号泣
「夏」を冠した名を持った
お前がまとう熱がある


持ち得る光は誰にでも
差し込むものと信じ切り
眩しいばかりを追いかけて
日輪を背負い進み行く


その足下に深々と
底の見えない影ができ
自身でそれに立ちすくむ


その腕が
お前自身を抱かぬとも
ふるえることのないように
闇・厳寒をこの胸に
気付かれぬようしまい込み
その名の通りその上に
「夏」をとどめておいてやる


咲き誇れ向日葵
通りゆけ夕立
枯れる時を知るな
止まぬ雨を聞くな


常夏の陽をただ受けろ!

おやすみ

「おやすみ」


ほんの少し 眠れずに タオルケットにくるまれて いろいろを 考えてみた
特別なことじゃなく 日常の ありふれたこと


いそがしくしていれば そうじゃなくても 誰かからの電話 クレジットカードの請求書
そんなことで 忘れてしまうような 気持ちの 細波を 追いかけてみた


この胸に 棘が刺さってる
気がつかないでもいられるような 気をつけなければすぐとれてしまうような
浅い 浅い 傷が あって 痛い と声を上げるには あまりにささやかな
だけれど それは 棘


細波は 夜風がすぎることで 形を変えてしまうほど 弱々しくはあるけれど
細波に 揺れる 棘と僕は 絡まりながら 揺れる 眠りにつくまで 忘れてしまう


毎日は そんなゆらぎを 置き去りにして うしなうものなどないほどの ゆらぎだけれど


棘と僕はそうやって 眠るまで 日常から はみ出して 声も出さずに
ほんの少し 痛い 浅く小さく だけれども 傷


ありふれた 日常は 目を閉じて 眠るたび 繰り返す 変わらずに 細波のように
明日には 消えてしまう この胸に浮かぶ いくつかの できごと もう 考えもしない


おおきく 揺れるなら たすけて と この タオルケットに 誰かを くるんでしまえる
言葉にして なぐさめあえる 過ちでも


洗濯機で 棘と タオルケットを洗って ベランダに 大きく 広げ 干す
それを 気持ちいいと知っているから
週末は晴れたらいいと ちいさく 祈って 目を閉じる


おやすみ

夏休み

「夏休み」


半分も開けてないまぶたのもやのかかった視界の
まだ夢のなかのここからはだしの足が見える
つま先立って歩くというより忍び寄るような足取り
また目を閉じて
冷蔵庫が開く音をグラスに液体が注がれる音を
もう夢のなかのここから浮腫んでる顔が見える
泣きはらしたというより不機嫌になっちゃって
タオルで暖めたり冷やしたり


半分も過ぎてない夏休みの雲のかかった空の
まだ夜のなかのここからはだしの足が見える
嬉しいときのスキップがうまくできなくて爆竹をよけて跳ねるみたい
またノートを閉じて
蝉時雨降る音をスイカを二つに切る音を
もう大人になったここから真っ黒になった顔が見える
日に焼けたというよりどこかの国の子供になっちゃって
絵日記の天気あとで困ったり


涼しい明け方の空気をいっぱいに吸う
始まる一日にわくわくするあの夏の笑顔はだれ
吸い込む空気は心地よく胸を洗うのに
始まる一日にかなしくなるこの夏の笑顔はどこ
吐き出すときにどうして涙が出るんだろう


半分ずつ狭いけど分け合ったベッドのあしもとに
わだかまるように湿ったタオルケット
湿っていても寒ければそれに手を伸ばす
がまんできれば眠ってやり過ごす
肌寒いのに気づいて欲しいのに
がまんできれば眠ってやり過ごす
いくらでもタオルケットぐらい買えるのに


甘い匂いの湿った空気をいっぱいに吸う
触れる指先にわくわくするあの夏の笑顔はだれ
吸い込む空気は心地よく続きの夢に誘うのに
触れる指先にかなしくなるこの夏の笑顔はどこ
吐き出すときにどうして涙がでるんだろう


半分だけ短いけど分け合った夏休みの隙間に
忘れてしまう直前のおもいで
寒いのに気づいてそれに手を伸ばす
がまんできれば眠ってやり過ごす


いくらでもおもいでぐらい


忍び寄る足取りで隣に滑り込んで
眠ったふりでいつか眠る


自分にだけおやすみをいう夏はいつまで