〜2020/02/22
そうだ、死んでるように生きることができるんだ。猫が生きている限り。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月27日
うたた寝のふくらはぎが冷えて目覚める
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月29日
ああそうだ。
夢にみるきみが
タオルをかけることは
もうないんだね
曇天の夕暮れ
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年6月2日
ぼくの裸足を
開け放つ窓の
風がもて遊ぶ
ああ雨が降る
湿る床のまま
開け放ちたい
不貞腐れては
床に転がって
眠りの淵で
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年6月3日
斧を落とした様に
あなたが姿を現し
何を失くしたのと訊く
僕は淵のぎりぎりで
落ちない様に起きない様に
曚々と眺める
曖昧模糊とした
その姿を瞼に
その声を耳朶に
嗚呼、僕はもう眠って仕舞う
表情一つ判りもしない儘
曖昧なものを曖昧なままにしたいし、書くことで失う言葉や記憶まで僕はできれば覚えていたい。それは書く側の気持ちで読む側には全く伝わらない(ことが正しい)んだけど。インデックスづくりみたいなことかなぁ。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年6月3日
こんな湿った夕暮れには
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年7月23日
そばに寄らずに
それでも話をしたっけ
愛おしい気持ちと
べたつく肌の不快と
いつでも君がいるという安心感
ねぇ、桃を食べようか?なんて
まるで幸福の果汁に
溺れていたような
地面の上のゆらゆらの
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年7月30日
こちらが地獄かあちらが彼岸か
あなただけが
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年7月30日
時の流れと共に進み
形の中に流れ込んでゆく
ぼくはまるで自ら
すべてを拒んだかのように
拙いまま澱み死んでいく
ぼくの世界は
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年7月30日
ぼくの知らないところで
春が過ぎ夏が来て秋を迎え冬に備える
あなたの居場所を四次元に見失う
不在の形にえぐられた歪さで
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年7月30日
生きていくことがほんとうにつらい
指を、言葉を。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月10日
ぼくはそれらを飛ばしてみては
届かなくただ空を切ることに
安心している。
いないのと同じであることに
骨まで寛いでいる。
なんと美しいなんでもないような昼。
ああ、まるで駅までの近道を選ぶように
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月11日
僕の終わりを選んでしまいそうな夕立の午後だ。
ありふれて馴染んだ
きなくさくあまい死の匂い。
生きる人はいい。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月11日
また明日が待っている。
冷えた桃を食べるような天国に行けたらいいのに、僕は天国も地獄も来世も信じられない。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月11日
桃のような天国を夢見ることができたらどんなに素敵な路だろう。
ぼくはあなたがいたことを
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月11日
閉じたまぶたに冷たく灯している
どんな闇にいてもあなたが光
何よりも早く遠ざかる光
まとわりつく8月。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月14日
太陽が夏を焼き付ける、
腕時計の日光写真。
雲、途切れ途切れ。
せめてその雲が夕立を。
風を。
ウエハースのアイスクリームを
食べて帰ろう。
葡萄月を待てず
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月14日
濃紫のそれを含む
ああそれは
どこから僕のところへ来て
僕の隅々に辿り着いてくれたのか
程よく冷えた濃紫は
ぼくの体と胸を目覚めさせる
うっとりと身を任せて
ああそれは
その夕暮れに何と名付けよう
産毛の白いところを
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月14日
くぅ、とほんの少し押し込める。
どこもひとつも疵のない桃。
それからすぅと剝いて
まるで
何もしていないかのような素振りで食べる。
すこしだけ確かめてみたくなる。
僕のものになった、その柔らかさを。
薄いコーヒーと
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月14日
チョコレートのかかった
チョコレートのドーナツ
窓の外を眺めながら
ぼくはいつもこの店で
気安い女友達のことを思う
簡単にひどく甘くて
ほんの少し幸福にするそれを。
指がべたつくところも。
僕は今でも
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月14日
僕のためだけにでも
2つのグレープフルーツを
一度に剥く。
あの頃の君のように
破片を摘みながら。
(柑橘リクエストに応えて)
蜜の様な独り遊びも気分でなく
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月17日
本を読む思考でもなく
耳からの刺激も欲しくない夜
何度も何度もただ寝返りを打つ
まるで僕が船になったよう
ゆらりゆらりと揺れて
眠れぬ岸辺から
沖へ出たいけれど
静かな湖畔の僕に乗り込んで
オールを漕ぐ人も
いない
沖へ出るのか沈むのか
今夜眠るというのは
ああこれは耳鳴り
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月17日
そしてそれは幻聴
僕に話しかける
微笑みながら
何度も僕に話しかける
いつでも微笑みながら
知っている
これは耳鳴り
それは幻聴
知っている
話しかけはしない
微笑みもしない
月影がついて来て
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月17日
僕を呼ぶ
まるで
振り向いたらいつもいるよ
というように
細くなり
戻り
時に見えないくせに
煌々と雲の切れ間から
キリリとした輪郭でついてくる
いつもいるよ
というように
ずっとついて来ながら
大事なときにはいやしない
手元は暗いばかり
指先も覚束ない
たよりないぼくら
花が咲くように
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月19日
笑った。
散る。
僕が超えたい一線。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月20日
その向こうはとても魅力的だ。
想像もつかないけれどーー
ぼくはぼくを生きないというぼくの生きかた
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月20日
笹の葉を千切る香りで
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月22日
あなたを待った公園に戻る
忘れていたことがあるなんて
僕にまだ埋もれた記憶があるのなら
思い出すために何ができる‐‐?
悲しみの閾値がその程度なのか?
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年8月31日
サビだけ覚えた歌の
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年9月9日
あやふやなメロディを口ずさむ
そんな気楽さで会いにゆくよ
炸裂する花火
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年9月9日
火薬の匂い 潮の香り
砂を踏む 小雨湿る砂
かき氷の青い舌
傘の中から 滲む景色
寄せた 頬の産毛
ばらのはなびらのしたで
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年9月9日
あなたのゆびにふれさせて
眠れない夜の向こうの夜明けに
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年9月9日
電話をかけたいのは
僕だって同じなんだ
漣だけが胸に広がる
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年9月12日
もう何もかもが終わってしまった
星が瞬くように
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年9月15日
密やかに時めく胸
涼やかに高く遠く
確かにあかるいあの場所
目を閉じた闇に
光る一等星
君が帰ってくる
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年9月15日
廊下の足音が好きだ
生活の面倒をすべて忘れる音
さあ、今日はどんな機嫌?
熱にうかされても
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年9月16日
口にしない秘密
大切すぎて誰にも言えない
絶望の向こうの絶望の向こうにぽっかりとあかるい死が待っている。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年11月14日
今年が終わるように
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年12月30日
僕のときめきにも
タイムリミットがあればいい
ほかのことに
心を砕くこともできたらいいのに
小指の付け根のふっくりとしたのを
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年1月19日
手癖でいつも揉んでいたこと、
なぜ忘れていたのだろう。
思い出したらこんなにも身悶えするほど愛おしく愛おしいし可愛らしく可愛らしいのに。
ここでただこれだけ愛していて
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年1月19日
ほだしがないぶん命が軽いことに
まったくせいせいしている
未来のない愛は清々しく流れる
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年1月19日
濁ることもない
湧いて湧いてただ流れてゆく
僕らは最後になにを交したんだっけ。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月10日
終わってから1通届いたメールは
わすれないのだけれど。
指凍る
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月10日
その横顔を
ただ見たか?
そのあと確か
つないでいたのか?
君が行っていたというカフェがまだある。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月10日
僕は想像する。
あのコーヒーを飲みながら
ふと目をやって考える君、
気を抜く君。
幻。
ぼくは彼女を愛していることを澱で濁らせたままにしたくない。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月10日
美しいひとにふさわしく、ぼくは透明ななにかになって、
届けない愛をただ胸に抱いていたい。それは夜中の砂丘のように静かだ。
あれから時は止まって、
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月22日
なにかが続けられている
僕はそれを
生活と呼ぶ
ああ何て美しい
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月22日
僕が見る世界に
僕だけがいない
目を閉じると見える君が
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月22日
今の現実なんかよりずっと好きだ
なるべくの静寂と闇
震えだす鼓膜
声がする
僕を呼ぶ
遠く近い薔薇の花びらの下
愛がきょうきになることを
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月22日
ぼくはもう知ってしまった
ごめん、こんなに愛してる
些細な棘に躓いて
— 江月 游 (@u_ezuki) 2020年2月22日
そして立ち上がる気力は
気付いたら無かった
もう枯れていた
涙も声も枯れていた
君がうずくまる理由を
誰にも伝える力さえ無い
誰かに伝える気さえ無い
掛けられる言葉に
答える言葉も
差し出される手を
握り返すことも
ひとりただ眠ることでしか
解決できない夜がある
〜20190515
その背の骨に
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年4月21日
じわりにじむ
汗の甘い香り
知っているよ
食事のあとで
いただきます
遠くから夏の夜の気配
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年4月21日
夜はまだ冷えて
それでも夜のむこうの夜に
夏が混じっている
少し寒いパジャマを
毛布で包み抱いて眠る
昼間の熱で熱が出る
指を冷やすように
寒くないように
きみの冷蔵庫のチョコレートが
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年4月21日
なかなか無くならない季節
僕はこっそり二粒食べた
バレなくてもバレても
二人してきっと笑う
冬まで遊べる?
ねえ、なんだか
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年4月21日
花火の幻聴がするよ
朝顔の産毛まで幻視できるよ
たまにはビールでも飲む?
猫に風の通り道を
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年4月21日
ぼくの愛の道を
あなたは泣いて静かに泣いて疲れたと泣いた
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年4月23日
そして泣いてやはり静かに泣いてごめんねと泣いた
帰りたいところがないのと泣いて泣きながら帰った
僕がどれほどあなたを好きか知っていて泣きに来て泣いて
僕のことなどすきじゃないとばかりに家に帰っていく
帰りたくないのに泣いて疲れに帰る
すきなのに
あなたを奪うほど好きじゃないよと愛が言う
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年4月23日
もうだめだ、って気持ちがどんどん深くなる。あなたのことを考えてふと微笑んで足元を見ると、僕の両足はまたもっと深いだめなところに埋まっている。あなたを思う。たぶん千切れるように傷んでいる。でも僕はもう這い上がらなくていいからそのままにして、またふとあなたを思う。僕のただ一つの光。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年6月29日
死んでいるようにいきたい。せめてしんでるみたいに行く。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年6月29日
月の夜に会おう
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年10月10日
猫の爪のように細い
麦の粒のように太い
すぐに忘れてしまうような
ありふれた夜
そうじゃなければ
月だけを思い出すようなーー
枯れ葉を蹴って歩いていた
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年10月10日
ぼくは今日
枯れ葉を蹴って歩いていた
うつむいて
いつもどおりうつむいて
今日もいつもの道を
進むでも戻るでもなくただ
足を出していた
枯れ葉を蹴って
季節が音を立ててくる
ぼくに知らせてくる
うつむいてばかりいても
なぜ、ぼくとだれかということ、
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年10月10日
例えば、ぼくときみということに、
名前を付けたりするのだ。
ぼくの誠実は
平気であの日々以外を
滅茶苦茶にするのに。
僕を大事と思うなら、黄色い線の外側までお下がりください。ぼくの乗りたい電車はこない。ここで起きてここで眠る。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年10月10日
使いかけのあの冬のハンドクリームが、まだあの引き出しにあることを知っているんだ。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年10月17日
あれがふわりと香るのも僕は知っている。蓋を開けなくても、包まれることができる。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年10月17日
少し油の回ったドーナツと薄いコーヒーって馴染んだセフレに似てない?
— 江月 游 (@u_ezuki) 2018年10月20日
絶望的に向いてない、生活することに。
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年4月6日
冷蔵庫の奥から
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月11日
いつのか分からない
誰からのかだけ分かる
チョコレート
新緑。
指でデコレーションを融かし
台無しにしてから食べる
おぼろな満開を
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月11日
花びらを
忘れてしまう
ああなんて見事な緑の木々
強い日差しに
めぐることまで忘れてしまう
美しく柔らかな
迷いのない新しい緑
明日の雨を知れ
さぁもっと濃く強くなれ
生活は針の穴を通すような投球を続ける投手のように続く
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月11日
暴れる脳の、不意の静寂
まるで暑かった日に思いがけなく冷える夕暮れかのような
絶望の底に星が降る夜もある
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月11日
月影が過ることも
繰り返し繰り返し思い出す
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月11日
耳に残る甘い蜜が
他の全てを遮る
幸福な孤独
細い感嘆をこらえきれず洩らす
その腰を深く抱いた
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月11日
接吻(くちづけ)までもした
愛し合うということの終わり
レースの切れ端の小花らが
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月15日
秘密の話をして笑い合う
濃い青の下
潤沢な碧の上
やわやわと 風
時にしならされ
またそれも笑いを誘って。
川面に透ける水草の
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月15日
なんて涼しげでやわらかい
見るより冷たい水中で
それでも日を受けて
伸び伸びとゆるやかに
静かに熱量を産み消費し
食われ護り機が来れば絶え
あんなふうに暮らせたら
ごうごうとした
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月15日
高架下で
それはすこし嫌い、
と呟いたりもした
5月になれば仄かに汗が交じる
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月15日
あなたのそれが好きで
何度も何度も飽きもせず
斜め後ろから首筋を噛み
じゃれついては笑われた
向こう側にあった
ジャスミンと交じるそれ
まだ踏切がある通り
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月15日
わざと選んで
遮断器の間に
君の手を取った
指先に うたを
— 江月 游 (@u_ezuki) 2019年5月15日
グレープフルーツ
グレープフルーツ
サッシから足を投げだして君が皮を剥く
房をひとつ外しつるりとそれも剥く
ベランダの椅子で
君が伸ばした手からそれをひとくちで含む
ひと房そしてまたひと房
少しちぎれたのを君が口にする以外を次々
二つ目の半分でもういらないになるまでそうして
残り半分を前に君は紅茶とおしぼりを運んでくる
指とべたつくあごを拭いてそれを受け取る
君は続きを剥いて口に運ぶ
君の脇をすり抜けタバコを取って戻る
食べ終わって指を拭き二人タバコを吸う
ちかくにいると確信できるとき
常夏
「常夏」
向日葵に似た笑顔
夕立の様な号泣
「夏」を冠した名を持った
お前がまとう熱がある
持ち得る光は誰にでも
差し込むものと信じ切り
眩しいばかりを追いかけて
日輪を背負い進み行く
その足下に深々と
底の見えない影ができ
自身でそれに立ちすくむ
その腕が
お前自身を抱かぬとも
ふるえることのないように
闇・厳寒をこの胸に
気付かれぬようしまい込み
その名の通りその上に
「夏」をとどめておいてやる
咲き誇れ向日葵
通りゆけ夕立
枯れる時を知るな
止まぬ雨を聞くな
常夏の陽をただ受けろ!
咲
「咲」
目を閉じ耳を澄ます
はなびらの開く音
月も沈んで闇に
蜜が香る気配
静けさなら
夜明け前
手折る
その
罪
おやすみ
「おやすみ」
ほんの少し 眠れずに タオルケットにくるまれて いろいろを 考えてみた
特別なことじゃなく 日常の ありふれたこと
いそがしくしていれば そうじゃなくても 誰かからの電話 クレジットカードの請求書
そんなことで 忘れてしまうような 気持ちの 細波を 追いかけてみた
この胸に 棘が刺さってる
気がつかないでもいられるような 気をつけなければすぐとれてしまうような
浅い 浅い 傷が あって 痛い と声を上げるには あまりにささやかな
だけれど それは 棘
細波は 夜風がすぎることで 形を変えてしまうほど 弱々しくはあるけれど
細波に 揺れる 棘と僕は 絡まりながら 揺れる 眠りにつくまで 忘れてしまう
毎日は そんなゆらぎを 置き去りにして うしなうものなどないほどの ゆらぎだけれど
棘と僕はそうやって 眠るまで 日常から はみ出して 声も出さずに
ほんの少し 痛い 浅く小さく だけれども 傷
ありふれた 日常は 目を閉じて 眠るたび 繰り返す 変わらずに 細波のように
明日には 消えてしまう この胸に浮かぶ いくつかの できごと もう 考えもしない
おおきく 揺れるなら たすけて と この タオルケットに 誰かを くるんでしまえる
言葉にして なぐさめあえる 過ちでも
洗濯機で 棘と タオルケットを洗って ベランダに 大きく 広げ 干す
それを 気持ちいいと知っているから
週末は晴れたらいいと ちいさく 祈って 目を閉じる
おやすみ
夏休み
「夏休み」
半分も開けてないまぶたのもやのかかった視界の
まだ夢のなかのここからはだしの足が見える
つま先立って歩くというより忍び寄るような足取り
また目を閉じて
冷蔵庫が開く音をグラスに液体が注がれる音を
もう夢のなかのここから浮腫んでる顔が見える
泣きはらしたというより不機嫌になっちゃって
タオルで暖めたり冷やしたり
半分も過ぎてない夏休みの雲のかかった空の
まだ夜のなかのここからはだしの足が見える
嬉しいときのスキップがうまくできなくて爆竹をよけて跳ねるみたい
またノートを閉じて
蝉時雨降る音をスイカを二つに切る音を
もう大人になったここから真っ黒になった顔が見える
日に焼けたというよりどこかの国の子供になっちゃって
絵日記の天気あとで困ったり
涼しい明け方の空気をいっぱいに吸う
始まる一日にわくわくするあの夏の笑顔はだれ
吸い込む空気は心地よく胸を洗うのに
始まる一日にかなしくなるこの夏の笑顔はどこ
吐き出すときにどうして涙が出るんだろう
半分ずつ狭いけど分け合ったベッドのあしもとに
わだかまるように湿ったタオルケット
湿っていても寒ければそれに手を伸ばす
がまんできれば眠ってやり過ごす
肌寒いのに気づいて欲しいのに
がまんできれば眠ってやり過ごす
いくらでもタオルケットぐらい買えるのに
甘い匂いの湿った空気をいっぱいに吸う
触れる指先にわくわくするあの夏の笑顔はだれ
吸い込む空気は心地よく続きの夢に誘うのに
触れる指先にかなしくなるこの夏の笑顔はどこ
吐き出すときにどうして涙がでるんだろう
半分だけ短いけど分け合った夏休みの隙間に
忘れてしまう直前のおもいで
寒いのに気づいてそれに手を伸ばす
がまんできれば眠ってやり過ごす
いくらでもおもいでぐらい
忍び寄る足取りで隣に滑り込んで
眠ったふりでいつか眠る
自分にだけおやすみをいう夏はいつまで